by Toru Yamamori | Nov 22, 2021 | Japanese
The original English article is here by Pierre Piquemal.
Translated by Yoshihiro Norikane
Edited by Toru Yamamori
2021年6月1日
ピエール・ピクマル氏(Pierre Piquemal)によるニュース特集
新しい保証所得プログラムが米国で発表されました。今回は、米国で2番目に大きな都市であるロサンゼルスです。 ロサンゼルスのエリック・ガーセッティ市長は、2021‐2022年度会計予算案に、市内の2,000世帯が1年間月額1,000ドルを無条件で受け取る2,400万ドルの保証ベーシックインカムプロジェクトを含めました。 「BIG:LEAP」(ベーシックインカム保証:ロサンゼルス経済支援パイロット)と呼ばれるこのプログラムは、米国で最大規模の保証所得プログラムの1つです。 2021年7月1日から始まる会計年度に提案された市の予算が公表された4月末、この発表が行われ、予算は通常6月初旬までに承認されます。
計画の詳細は最終化されつつありますが、市長は、プログラムの参加者が好きなようにお金を使うことができるので、支払いは全く無条件であると断言しました。 しかしながら、連邦貧困ライン以下(1人の場合は年収12,880ドル、2人の場合は17,420ドル)であること、ほとんどの場合、18歳以下の子供を支援し、コロナ禍による経済または健康上の困難にさらされていることなどの適格基準があります。 一方、移民であることは選択基準にはなりません。 また、この保証所得は個人ではなく世帯に行くようです。
承認された場合、BIG:LEAP(ベーシックインカム保証:ロサンゼルス経済支援パイロット)は、国内の都市主導による一連の保証所得プログラムで最新のものになります。 2018年にミシシッピ州のジャクソン市、2019年には「SEED」(ストックトン経済エンパワーメントデモンストレーション)がカリフォルニア州のストックトン市で開始され、この2年間には、オークランド市(カリフォルニア州)、パターソン市(ニュージャージー州)、デンバー市(コロラド州)、シカゴ市(イリノイ州)、ゲイリー(インディアナ州)、および全国多くの都市が、何らかの保証所得プログラムを発表または実施しました。
そして、これらの取り組みは都市レベルでのみで行われているわけではありません。 南カリフォルニアだけでも、BIG:LEAPまたはコンプトン市で実施されたコンプトン プレッジの呼ばれる所得保証実験に加え、ロサンゼルス郡監督委員会は、対象となる郡住民のための保証所得プログラムを企画するよう行政の関係スタッフに求める2つの別々の動議を可決しました。 これらの最初の企画は、動議から60日以内、つまり7月の第3週までに作成されます(動議1、動議2)。 ロサンゼルス市内には、南ロサンゼルス地区とダウンタウン地区にも特定の保証所得実験が実施されています。
適格基準は、現金支給額や実験期間と同様に都市ごとに異なりますが、いずれにせよ、進行中のプログラム数の増加は、米国でのベーシックインカムへの関心の高まりを示しています。 コロナ危機は、確かにこの高まる関心の勢いの背後にある要因です。 ガーセッティ市長がロサンゼルスでの実験提案で概説した潜在的な適格基準の一つは、パンデミックに直接関係しています。 サンフランシスコはこの危機に見舞われたアーティストを対象としたプログラムを作成し、他の都市はベーシックインカムへの関心の背後にある要因の1つとして、経済状況に対するコロナ禍の影響に言及しています。
これらの市主導の取り組みの多くは、元ストックトン市長でありSEEDプログラムの創始者であるマイケルD.タブスによって設立された市長の全国的なネットワークである「保証所得市長会」(MGI)によってサポートされています。 これは、「経済安全保障プロジェクト」(ストックトン実験に関与)やジャイン・ファミリー・インスティテュート(コンプトンまたはニュージャージー州ニューアークで提案されている計画に関与)など、さまざまな財団や非営利団体によってサポートされています。 確かに、これらのさまざまなプログラムは、特定のコミュニティの貧困を緩和する一義的な方法であり、本質的にローカルなものにすぎませんが、連邦レベルでのベーシックインカムに関する議論に資する実験としても見られています。
2020年8月に実施されたピュー調査では、アメリカ人の54%が連邦のベーシックインカムに反対または強く反対していると結論付けています。* これらのプログラムの支持者は、実施している実験が、無条件の現金給付は貧困を緩和するのに役立つだけでなく心身の幸福を増進し、そして重要なことに、人々が働くためのインセンティブを失わないなど、より強固な証拠に資することを期待しています。 より一般的には、これらのプログラムが貧困と経済不安に関する意味づけの変革に貢献することを望んでいます。
* 11,001人の米国成人のオンライン調査は、2020年7月27日から8月2日までの間に実施されました。その結果は、年齢層、民族、政党、および収入グループによって異なります。
by Toru Yamamori | Sep 3, 2021 | Japanese
The original English article here by by Pierre Piquemal
Translated by Yoshihiro Norikane
Edited by Toru Yamamori
2021年4月20日
ピエール・ピクマル氏による
2019年2月、当時のストックトン市長マイケルD・タブス(Michael D. Tubbs)は、米国最初の市長主導の24か月に亘る保証付き所得イニシアチブとして、ストックトン経済エンパワーメントデモンストレーション(「SEED」)を開始しました。 2年後、実験の最初の12か月間(コロナ禍前の2020年2月まで)の予備的結果が発表されました。その主な調査結果は、この保証された所得に肯定的なものであり、保証所得は、収入の変動を軽減し、フルタイムの仕事へのアクセスを可能にし、メンタルヘルスを向上させ、自分の時間と決断をより良く管理できるようにするというものでした。
プログラム設計
SEEDプログラムでは、125人のストックトン居住者が無作為(ランダム)に選ばれ、2年間月額500ドルを受け取りました。給付に条件はなく、資格基準は18歳以上のストックトン居住者で、収入の中央値(ストックトンで46,003ドル)以下であることに限られていました。これらの同じ基準を満たす200人の対照群(コントロールグループ)も研究目的で選ばれました。
この実験は、「経済保障プロジェクト」からの100万ドルの助成金を含む民間の寄付によって賄われています。このプロジェクトは、保証所得と独占禁止措置に特に焦点を当てた「すべてのアメリカ人のために経済を再び機能させる」ことを目的としたイニシアチブです。
このプログラムは、テネシー大学のスタシア・マーチン‐ウエスト(Stacia Martin-West)博士とペンシルベニア大学のアーミー・カストロ・ベーカー(Amy Castro Baker)博士の2人の研究者によって、実験前および実験中に収集されたデータの定量的分析と定性的分析の両方からなる「混合法アプローチ」の下で評価されています。データは、調査と対面またはグループインタビューの両方を通して収集されました(実験への参加は、これらのインタビューへの参加を条件とはしていませんでした)。
この実験は、公的機関やコミュニティメンバーと緊密に協力して、地域の特殊性(たとえば、支払いのタイミングやメカニズム)に合わせて調整し、受給者、対照群の人達、SEEDスタッフ間での信頼を構築するように設計されました。この作業は、所得の無条件で保証された性質(「真実であるには良すぎる」と見なされる)および他の給付資格を失うリスク(経済保障プロジェクトによる特定の作業によってカバーされる)に関する当初の懸念に対処するために必要でした。
主な調査結果
暫定的結果は、受給者が受け取った所得について合理的な決定を下し、主に「必需品」(食料、光熱費、自動車の手入れ)に費やしたことを示しています。研究者たちはまた、受給者がより広いネットワーク内の人々を支援することができるというプラスの波及効果も発見しました。受給者はまた、所得変動に翻弄されることがより少なく、注目すべきことに、以前よりも現金または現金同等物の予期しない出費に敢然と立ち向かうことができると報告されました。
保証所得は、受給者に有意義な活動(社交、子供達との時間を過ごす)に従事するためのより多くの時間を与えました。研究者によると、これはどのようにして「財政的不足が時間的不足を生み出す」かを浮き彫りにしている。参加者にはまた、ベースライン測定と比較してメンタルヘルスの改善が報告されましたが、対照群のメンバーでは改善が経験されませんでした。
最後に、このプログラムはフルタイムの雇用増加にもつながりました。プロジェクトの開始時には、受給者の28%がフルタイムの仕事をしていました。 1年後、その割合は40%に上昇しました(対照群においては、割合は32%から37%にしか変化しませんでした)。いくらかの人々は、保証所得により、学位を取得または修了する時間が与えられた、あるいは単に特定の職に応募する自信が増したと述べました。
反応
これらのプログラムが、仕事へのインセンティブを排除せず、また、「貧困はその人の性格からではなく、現金の不足から生じる」と研究者が述べているように、現金給付が貧困に対処する効果的な方法となる更なる証拠により、研究発表に対する反応は肯定的でありました(しかしながら、研究者とタブス市長は、これらの現金給付はストックトンなどの都市の住民が直面する問題への唯一の解決策ではないことを素早く指摘しています)。
一方、SEEDは小規模で比較的短い実験であると指摘し、研究から早急に結論を出すことを警告している人もいます。この研究のもう1つの制約は、保証所得の出費の追跡が、研究者と協力している受給者に依存していたことです(所得は、研究者が支出記録にアクセスできるプリペイド即時決済カードに転送され直接利用されるか、または、現金として引き出されるか別の口座へ振り込まれるかでした。受給者の約40%に相当する後者の場合に対しては、特定の調査を実施する必要がありました。)最後に、一部の批評家は、実験が民間資金で行われていたという事実を利用して、ベーシックインカムが公的機関にとって費用がかかり過ぎると主張しました。
とにかく、これらの結果は、米国のベーシックインカムについての議論の高まりに確実に追加されます。 他の実験も進行中であり、2020年6月、マイケル・タブスと「経済保障プロジェクト」は、都市での保証所得実験の実施に向けて取り組んでいる全米の約40人の市長のネットワークである「保証所得市長会」を設立しました。
https://www.stocktondemonstration.org/
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