The original English article here by by Pierre Piquemal

Translated by Yoshihiro Norikane

Edited by Toru Yamamori

2021年4月20日
ピエール・ピクマル氏による

2019年2月、当時のストックトン市長マイケルD・タブス(Michael D. Tubbs)は、米国最初の市長主導の24か月に亘る保証付き所得イニシアチブとして、ストックトン経済エンパワーメントデモンストレーション(「SEED」)を開始しました。 2年後、実験の最初の12か月間(コロナ禍前の2020年2月まで)の予備的結果が発表されました。その主な調査結果は、この保証された所得に肯定的なものであり、保証所得は、収入の変動を軽減し、フルタイムの仕事へのアクセスを可能にし、メンタルヘルスを向上させ、自分の時間と決断をより良く管理できるようにするというものでした。

プログラム設計

SEEDプログラムでは、125人のストックトン居住者が無作為(ランダム)に選ばれ、2年間月額500ドルを受け取りました。給付に条件はなく、資格基準は18歳以上のストックトン居住者で、収入の中央値(ストックトンで46,003ドル)以下であることに限られていました。これらの同じ基準を満たす200人の対照群(コントロールグループ)も研究目的で選ばれました。

この実験は、「経済保障プロジェクト」からの100万ドルの助成金を含む民間の寄付によって賄われています。このプロジェクトは、保証所得と独占禁止措置に特に焦点を当てた「すべてのアメリカ人のために経済を再び機能させる」ことを目的としたイニシアチブです。

このプログラムは、テネシー大学のスタシア・マーチン‐ウエスト(Stacia Martin-West)博士とペンシルベニア大学のアーミー・カストロ・ベーカー(Amy Castro Baker)博士の2人の研究者によって、実験前および実験中に収集されたデータの定量的分析と定性的分析の両方からなる「混合法アプローチ」の下で評価されています。データは、調査と対面またはグループインタビューの両方を通して収集されました(実験への参加は、これらのインタビューへの参加を条件とはしていませんでした)。

この実験は、公的機関やコミュニティメンバーと緊密に協力して、地域の特殊性(たとえば、支払いのタイミングやメカニズム)に合わせて調整し、受給者、対照群の人達、SEEDスタッフ間での信頼を構築するように設計されました。この作業は、所得の無条件で保証された性質(「真実であるには良すぎる」と見なされる)および他の給付資格を失うリスク(経済保障プロジェクトによる特定の作業によってカバーされる)に関する当初の懸念に対処するために必要でした。

主な調査結果

暫定的結果は、受給者が受け取った所得について合理的な決定を下し、主に「必需品」(食料、光熱費、自動車の手入れ)に費やしたことを示しています。研究者たちはまた、受給者がより広いネットワーク内の人々を支援することができるというプラスの波及効果も発見しました。受給者はまた、所得変動に翻弄されることがより少なく、注目すべきことに、以前よりも現金または現金同等物の予期しない出費に敢然と立ち向かうことができると報告されました。

保証所得は、受給者に有意義な活動(社交、子供達との時間を過ごす)に従事するためのより多くの時間を与えました。研究者によると、これはどのようにして「財政的不足が時間的不足を生み出す」かを浮き彫りにしている。参加者にはまた、ベースライン測定と比較してメンタルヘルスの改善が報告されましたが、対照群のメンバーでは改善が経験されませんでした。

最後に、このプログラムはフルタイムの雇用増加にもつながりました。プロジェクトの開始時には、受給者の28%がフルタイムの仕事をしていました。 1年後、その割合は40%に上昇しました(対照群においては、割合は32%から37%にしか変化しませんでした)。いくらかの人々は、保証所得により、学位を取得または修了する時間が与えられた、あるいは単に特定の職に応募する自信が増したと述べました。

反応

これらのプログラムが、仕事へのインセンティブを排除せず、また、「貧困はその人の性格からではなく、現金の不足から生じる」と研究者が述べているように、現金給付が貧困に対処する効果的な方法となる更なる証拠により、研究発表に対する反応は肯定的でありました(しかしながら、研究者とタブス市長は、これらの現金給付はストックトンなどの都市の住民が直面する問題への唯一の解決策ではないことを素早く指摘しています)。

一方、SEEDは小規模で比較的短い実験であると指摘し、研究から早急に結論を出すことを警告している人もいます。この研究のもう1つの制約は、保証所得の出費の追跡が、研究者と協力している受給者に依存していたことです(所得は、研究者が支出記録にアクセスできるプリペイド即時決済カードに転送され直接利用されるか、または、現金として引き出されるか別の口座へ振り込まれるかでした。受給者の約40%に相当する後者の場合に対しては、特定の調査を実施する必要がありました。)最後に、一部の批評家は、実験が民間資金で行われていたという事実を利用して、ベーシックインカムが公的機関にとって費用がかかり過ぎると主張しました。

とにかく、これらの結果は、米国のベーシックインカムについての議論の高まりに確実に追加されます。 他の実験も進行中であり、2020年6月、マイケル・タブスと「経済保障プロジェクト」は、都市での保証所得実験の実施に向けて取り組んでいる全米の約40人の市長のネットワークである「保証所得市長会」を設立しました。

https://www.stocktondemonstration.org/
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